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不屈の登山家マーク・ウェルマン

今回は、私の著書「映画の英語がわかる本」の中で取り上げた、

不屈の登山家マーク・ウェルマンさんの話を書こうと思います。

マーク・ウェルマン氏

(↑ 下半身不随の登山家マーク・ウェルマン氏)


まずは、私の本からの彼に関する部分を引用します。


「テキサス州出身のウェルマン氏は、1982年、カリフォルニアのヨセミテ公園内にある岩壁を登っている途中墜落し、両足が麻痺するという事故にあいました。

通常であったらその時点でロック・クライマーの道は断念するでしょう。一般的な社会生活を営むことさえ困難な状況に追い込まれたのですから、山への恐怖感、嫌悪感さえ起こって当然だったと思います。

しかし、山に対するウェルマン氏の執念は衰えませんでした。両足の自由こそ回復しませんでしたが、6年もかけて肉体を鍛え、周到な準備も積み重ねました。そして、1989年、山仲間が絶壁に張ったロープを頼りに、再度挑戦したのです。


両腕だけで自分の体を引き上げる高さは、1回にわずか15センチ。40度近い暑さが肉体を極限の状況へ追いやりました。時間はあっという間に経過。1日、2日、ようやく9日目1センチずつの歩みが、6400回に達したところで、頂上を極めたのです。

この話からも分かるように、1歩1歩の歩みはゆっくり遅くとも、続けていけば、大きな目標は達成できるのです。大切なのは、諦めずに挑戦し続けることです。自分の中に問題を克服する偉大な力が存在していることを認識した時、英語の方が屈服します。

その彼には、後日談があったのです。

下半身不随の登山家マーク・ウェルマン氏はその後、トラッキーの山岳コミュニティで生活しながら、彼の会社「No Limits (限界などない)」を運営し、障害を持っている人にアウトドアの装備を販売しています。

また、国中を旅し、多くの人に力強いスピーチをすると同時に、その障害をものともせず、まだ情熱的なスポーツマンとして、スキーや、クロスカントリー、カヤックなどもしているそうです。

そして、下半身不随になってから初めて両腕だけで登頂した1989年から10年経った1999年に、その登頂10周年を記念して再びヨセミテ国立公園の岩壁に挑戦しました。


この岩壁は、約1000メートルあり、全身が使える大人でも厳しいのに、下半身の自由がまったく利かず、両腕だけで頂上まで登るのはほぼ不可能に近いことです。しかし彼は、厳しいトレーニングの末に、それを可能にしてしまったのです。


彼は、この挑戦の日にこう言っています。


「私のメッセージは『障害を持っている人がここに来て、エル・キャプテンに登れ』ということではありません。そうではなく、彼らが人生において障害となっているどんな山でも登って欲しい、ということなのです。」

10年前よりもよりもさらにトレーニングをし、より強くなった彼は、前回登った「The Sheer」とは違う、より難しい「The Nose」というルートを取りました。そのルートは、この岩壁にある75~80のルートの中で、最も難しいルートのひとつだったのです。

10年前と同様に、両足の自由が利かない彼が1回に登れる高さはわずかに15センチ、それを7000から8000回繰り返し、1週間かけて頂上まで登る予定でした。


El Captain 2

(↑この岩壁を1週間かけて両腕だけで登るって・・・有り得ない(^^;))


しかし、10日分の食料と装備で100キロ近くあった装備の重さと、ルートの難しさ、また登頂前から引きずっていた病気などとの闘いもあり、そのペースは崩れ、10日たったところで、その食料と水は底をつきかけてしまいました。ですが、1日の食料を減らし、何とか空になる直前の11日目でやっと登頂に成功したのです。


毎晩彼は、その途中経過を彼のフィアンセに携帯電話でしていたそうですが、疲れてはいても、決して明るさを失うことはなく、ジョークを言い、笑い合っていたというから驚きです。


下半身不随という人生に影を落としかねない事故に遭っても、決して下を向かず、上へ上へと登ってきた彼には、きっとその大変なクライミングのプロセスですら楽しむことができたのでしょう。


11日間かけてその難しい岩壁の登頂に成功した彼らは、帰りは別のルートで、ラバの背に乗って降りてきたそうです。


彼の、多くの人々を勇気付けるためのあくなき挑戦と、その何物にも屈しない強いハートに、人の無限の可能性を見る気がします。



(↑車椅子で岩壁の上にいる彼が見えますか?)

私たちの人生や英語学習に立ちはだかる岩壁を、彼の不屈の精神を見習って、登ってやろうじゃないですか!


Mark Wellman, John Flinn

 

 

 

Climbing Back
(↑彼の著書です)